「深志定員割れ」の衝撃
2022/4/8
4/6の信毎に、このような記事が載っていました。
「進学校」定員割れの衝撃
ご存知の方も多いと思いますが、今年の高校入試では、深志が定員割れとなり、再募集となりました。
その他「諏訪清陵」「須坂」といった進学校でも定員割れとなりました。
定員割れの原因
中信地区のトップ校であり、旧制第一中学でもある伝統校、松本深志の定員割れ。
これはかなりのインパクトでした。
紙面では、定員割れの原因として
①前年度の反動
②私立高校の人気
③県ヶ丘の人気
が挙げられていました。
私もほぼ同意見です。以下、もう少し具体的に検討してみます。
隔年現象
まず「①前年度の反動」についてですが、昨年の深志の倍率は1.18倍でした。
昨年は松本4校の中で、深志が一番倍率が高く(県ヶ丘の探究科除く)、例年と比べても不合格者が多く出ました。
それは、昨年、定員が「280→320名」に増えたことによる影響が大きかったと思います。
昨年は定員が増えたことで、深志の人気が高まりました。
ですが、倍率が高かった高校は、翌年受験生が受験を避けるので、倍率が下がることが多いです。
いわゆる「隔年現象」というものです。
今年の深志は、その影響がモロに出たようです。
私立高校の人気
次に②私立高校の人気ですが、その中でも特に「都市大の人気」が上がっているのだと思います。
都市大は「入口」と「出口」の戦略がしっかりしている、という印象です。
まず「入口」部分ですが、都市大の入試は1月の「特別奨学生」入試から始まります。
この入試を、深志、県ヶ丘などを志望する受験生が、「お試し受験」として受験するのが、最近のトレンドになりつつあります。
この試験では「受験予定の高校での受験生順位」を出してくれます。
例えば、もし都市大の特別奨学生試験を受けた中で、深志が本命の生徒が60名いたとします。
そうしたら、その60名の中での順位がわかるということです。
都市大の特別奨学生試験を受ければ、
・スベリ止めがキープできる
・受験生内での順位が把握できる
・いち早く「受験」の雰囲気を体験できる
という訳です。
そうしたことから、特別奨学生試験は、年々レベルの高い生徒が受験するようになっています。
その結果「優秀な人材が集まりやすく」なっています。
次に「出口」部分ですが、これは「大学進学実績」です。
今年についてはまだくわしくわかりませんが、東北大学に合格者が1名出ていました。
地元の信州大学を始め、昨年は名古屋大学、今年は東北大学。国立大学、旧帝大にも合格者が出始めています。
「毎年着実に合格実績を挙げている」というのが、私の都市大に対する印象です。
こうした実績が評価されて、人気が上がっているのではないのかな、と思います。
他にも、松本国際は、スポーツだけでなく、学力面にも力を入れ始めているようです。
松商学園も、昨年新たに校長を迎え、学校改革を行っているようです。
こうした私立高校の積極的な動きと比べると、公立高校は「かなり」見劣りします。
今は私立高校に進学しても、自治体からある程度の補助が出ます。
「公立高校に進学しても、追加で予備校や塾に通ってお金がかかるくらいなら、私立高校で済ませた方が…」
そうしたシビアな判断をされているご家庭もあるのではないでしょうか。
魅力的な県ヶ丘
最後に③県ヶ丘の人気ですが、目立たない公立高校の中で、県ヶ丘は積極的に動いている印象があります。
県ヶ丘も「入口」戦略と「出口」戦略が優れている印象です。
「入口」では、「探究科」を設置し、「前期選抜」で、早めに優秀な生徒を確保しています。
「出口」の大学進学実績では、今年も京大に合格者を出すなど、安定した実績を出しています(ちなみに、今年は蟻ヶ崎からも1名京大に合格)。
「探究科」ができたことで、深志と県ヶ丘の「学力差」は、以前と比べるとだいぶ縮まってきています。
今年は深志が定員割れしたこともあり、
「深志合格者の最低点数」よりも「県ヶ丘合格者の最低点数」の方が高い
とも、うわさされています。
はたから見ていても、県ヶ丘の方が魅力的に見えます。なので、野心のある若者は
「深志でダラダラ過ごすくらいだったら、県ヶ丘で鍛えられて一旗揚げる」
そのように考える学生がいても、おかしくないのかな、という気がします。
今後の展望
「深志定員割れ」という「事件」を受けて、今後どのようになるか。
予想されるのは「定員減」です。
3年前の水準に戻し、「320→280名」にする。
今年、これだけ「定員割れ」が騒ぎになった以上、これはほぼ間違いないのではないかと思います。
個人的には「深志の定員を減らし、県ヶ丘か蟻ヶ崎の定員を増やす」ようにしてほしいな、と思います。
そもそも、前回深志の定員を増やした時にも、「深志じゃなくて県ヶ丘、蟻ヶ崎だろ!」と心の中で突っ込んだ関係者も多くいたのではないでしょうか。
そこに「魅力」があるのか?
ただ、それでも「深志の人気が回復するか?」というと、微妙です。
つらつらと「定員割れ」についての原因を挙げてきましたが、一言で言えば
「深志に人気がないから」
定員割れを起こした。これに尽きるような気がするからです。
積極的に生徒確保のために動いている私立高校や県ヶ丘と比べて、深志は「あぐらをかいている」という印象があります。
「地域トップ校だし、伝統校だから、放っておいても優秀な生徒が集まるだろ」
そうした驕り、怠慢が、何となく透けて見えてしまうのです。
ですが、今の生徒、保護者はシビアに見ています。
実力があり、大学進学まで見すえている生徒であれば、深志ではなく「長野高校」を選択します。
長野まで通えない生徒でも、野心のある生徒は、「県ヶ丘」を選択します。
手厚いサポートを希望する生徒は「私立高校」を選びます。
昔のように「待っていれば生徒が集まる」という時代は終わっています。
私が深志を目指したのは色々理由がありますが、その中の1つとして、「刺激を受けたい」というのがありました。
今から30年近く前、その頃にも「信学会の模試」はありました。
その模試を受けた際、志望校として「深志」と「県ヶ丘」を書きました。
県ヶ丘では順位が1ケタでした。
一方、深志では50位台でした。
「深志には、自分よりも上の人が50人もいる。そうした人たちに負けたくない」
この気持ちが一番大きかったと、今振り返って思います。
若い学生に「魅力」を提示するだけの「熱」が、「松本深志」にあるか?
浮上のカギは、この一点にかかっている。そう思っています。
☆YouTubeチャンネルもやっています
https://www.youtube.com/channel/UCcorE8DZR8FqA_EX2tlHo-A/featured?view_as=subscriber
ぜひご覧ください。