「得意を伸ばす」もいいけれど
2023/4/27
最近、こちらのオーディオブックを聞いています。
なんとなくタイトルに惹かれて聞き始めました。
予想していたのとは違う内容でしたが、非常に勉強になる内容です。
「非行をはたらいてしまった少年たちの背景」
について語られているのですが、同時に
「教育の在り方、役割」
についても考えさせられる内容となっています。
「反省」をしたくても
非行少年たちを矯正させるために、色々なプログラムがあります。
そうしたプログラムに対して、真面目に取り組もうとしない非行少年たち。
著者の先生は、最初は
「少年たちが不真面目だから」
「しっかりと反省していないから」
真面目にプログラムに取り組んでいないのだと思っていたそうです。
ですが、細かく調べていくと、実は非行少年たちは、プログラムで指示されている内容が「理解できていない」ということに気づきます。
「プログラムに書かれている内容が、何を表しているのか」
「プログラムで指示されている内容が、理解できない」
そのため、どうしていいかわからず、何もせずにしている。
そうした様子が、はたから見ていると「不真面目」に見えてしまう、ということです。
「得意を伸ばす」だけでは…
こうした非行少年の多くが、知能的に問題を抱えています。
「ケーキの切れない…」というのも、その1つです。
具体的な内容については、同書でご確認いただきたいのですが、世間一般で言われている「常識的」なことがらについても、多くの非行少年は
「わからない」
「理解できない」
状態になってしまっているそうです。
周りの人間が「普通に」理解できていることが、自分には理解できない。
そうした疎外感や、理解できないイライラから犯行に及んでしまう。
そうしたケースがある、ということです。
そして、著者はこう語っています。
「『得意を伸ばす』だけだと、不十分の場合がある。」
「最低限の知識については、たとえ苦手なことであっても身につけさせる必要がある。」
「『得意を伸ばす』だけで、苦手な部分の克服を避けると、逆にその子の才能を縮めてしまうおそれがある」
この提案には、非常に考えさせられました。
相手の言葉がわからない
私はどちらかといえば「褒めて伸ばす」タイプの人間だと考えています。
ですが、この本の内容を聞いて、
「何でもかんでも褒めていればいい」
というだけではいけないのだな、ということを感じました。
以前、中学に上がる直前の小6のお子様が、体験授業に来たことがあります。
正直、かなり学力の低い子でした。
「分数が苦手」
ということだったので、分数の復習をしたのですが、その中で「約分」が出てきました。
「4/6」の約分のやり方を説明していました。
私「4はいくつで割れる?」
生徒「2」
私「じゃあ6は2で割れる?」
生徒「割れる」
私「4と6は同じ2で割ることができるから、上と下を同じ2で割ると、約分することができるんだよ」
と説明して、
「じゃあ4/6を約分するといくつになる?」
と聞いてみました。
ほとんどの生徒は、これだけ説明すれば、約分はできます。
ですが、この生徒は、固まってしまいました。
「4」と「6」をバラバラにすると、「2」で割れることはわかる。
それが分数の形になると、わからない。
正直、かなり困りました。
「これ以上の説明はできないし、分数よりも、もっと根本的に問題がある…」
ということを感じました。
その生徒は、私の説明が「わかりにくい」と思ったのでしょう。
入塾することはありませんでした。
なので、その後、この生徒がどうなったのかはわかりません。
ですが、おそらく勉強面ではかなり苦労したのではないかと思います。
今回、こちらの本を読んで、この生徒のことを思い出しました。
相手の話す、簡単な内容についても理解することができない。
そうしたことが積み重なっていった時、人はどのようになってしまうのだろう。
あの時の生徒が無事に進学、社会人となっていることを願わずにいられません。
苦手にも向き合わせる
「一般社会で要求される、最低限の知識を身につけさせる」
それが、子供たちのためになり、ひいては社会のためになる。
そのためには、安直に「得意を伸ばす」ということだけをやっていてはダメなんだな。
「身につけるべきこと」については、その子がたとえ苦手なことであっても、向き合うようにしていかなければならない。
この本を読んで、そのことを強く感じました。
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