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「英語と日本人」

2023/5/30

「英語指導」に対する悩みは尽きず…。

最近はこちらの本を読みました。

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「英語と日本人-挫折と希望の200年-」

日本の学校で本格的に英語を教え始めたのが、明治時代。

それから令和の現代まで、どのような変遷を辿ってきたのか。

「日本における英語教育の歴史」を学ぶことで、現在の小中学校の「英語指導」の問題点が見えてきました。

明治時代にも、「小学校で英語」を教えていた

まず印象に残ったのは、

「明治時代にも、小学校で英語を教えていた時期があった」

ということです。

明治時代、外国との交流が盛んになり、「英語を話せる日本人」の必要性が高まります。

そうした要望を受けて、小学校でも「英語」を指導するようになりました。

今の我々の状況と、まったく同じような状況が明治時代にもあったのです。

では、「小学校で英語を指導する」ようになって、果たして英語を話せる日本人は増えたのか。

答えは「No」です。

様々な「反対意見」によって、「小学校での英語教育」は廃止されます。

こうした「歴史的な背景」から見ると、おそらく現在行われている「小学校の英語授業」は、将来、廃止されることになるのだろう。

元々、そのようなことを思っていましたが、その意を強くしました。

「中高で英語をやったのに…」に対する回答

次に、

「中学、高校と英語を勉強したのに、ちっとも英語が話せるようにならない」

という不満に対する「回答」意見が掲載されていました。

曰く

「日本人にとって、英語は『習得するのが難しい』言語」
「会話ができる程度のレベルまで引き上げるには『2200授業時間』が必要」

とのことでした。

現在、小中高で行われる英語の授業が「1000時間」。

なので、仮に小学校から英語教育を始めたとしても、

「そもそも英語を使いこなせるようになるまでの、絶対的な勉強時間が少ない」

ということが言えます。

「そもそも勉強時間が足りないのに、小学校で多少授業時間を増やしたところで、結果は変わらない」

という未来が予想されます。

日本人にとって英語は「習得が難しい」言語

また、こちらの本の中ではこのような指摘があります。

「日本語と英語は『語間距離』が離れている言語のため、習得が難しい」

例えば、「オランダ語」と「英語」は似たような語間になるため、オランダ語が話せる人は、オランダ語を活用することによって、「英語」が習得しやすくなります。

なので、明治時代に英語を習得した人達は、元々「オランダ語」を習得していた人が多かったようです。

というのも、「日本語から英語」を学ぶよりも、似たような語間である「オランダ語」を転用して「英語」を学んだ方が理解しやすい、という面があったから、ということです。

一方、日本語と英語は、「ぜんぜん違う」言語と言えます。

そのため、オランダ語のように「日本語」を転用することによって、英語を習得する、ということができません。

なので、一から学ぶ必要があり、習得するのが難しい、ということです。

また、日本のように、英語とはかけ離れた母国語を持つ国では、

「小さい頃からコミュニケーション活動をしていれば、自然と英語が身につく」

と考えるのは、かなり難しいようです。

英語を得意としていた文豪、夏目漱石は以下のような言葉を残しています。

「今の中学でただ練習の結果自然と英語を学ぶのは困難である。やむをえずまず規則を知ってそれを骨とし、それに肉を着せて互いの意志の疎通するように話し書くほかはない」

「文法を離れて訳はなく、訳を離れて文法はないものと合点しなければならない」

つまり、英語とは違う言語系統にある日本人が英語を習得するには、「文法を学ぶ」必要がある、ということを述べています。

現在の英語教育の主流は、「コミュニケーション重視」です。

漱石の言葉から考えると、この方針が、いかに「ピントがズレた」ものかがわかるかと思います。

「学校教育で英語が使えるようになる」という発想は…

この他にも、現在の英語教育について、痛烈な批判が述べられていましたが、一番私の心に響いた言葉が、これです。

「学校教育で『英語が使える』ようになるという発想は、『体育の授業で国体選手が出せる』なみの誇大妄想」

現在の「教育指導要領」に沿って行っている英語の指導は、明治時代に「失敗」の烙印を押されたものばかりです。

「歴史は繰り返される」という言葉を信じれば、おそらく、今の英語教育を進めたところで、「英語が話せる日本人」が増えることは、おそらくないでしょう。

むしろ、「読み書き」の力が鍛えられていない分、緩やかに英語力が下がっていくことにもなりかねません。

実際に「コミュニケーション重視」の方針が始まった頃から、高校入学時の英語の学力が年々低下している、という研究結果が出ているようです。

また、こちらの本を書かれた江利川先生も、25年間大学で指導した中で、

「英語の読解力が年々下がっている。加えて『日本語力』(特に書く力)が落ちてきた」

という実感を持たれています。

こちらの本にかかれていた内容は、現場で小中学生を指導していて漠然と感じていた私の「不安」とほぼ一致しました。

「今の『英語教育』ではまずい」

この本を読み終えた今、改めてそう思っています。

なので、少なくとも自分が関わる生徒に関しては、従来通りの「文法」「単語」重視の指導をしていこう。

そう思いました。

現在の「英語教育」を見つめ直す、という意味でも、また「日本人は英語とどのように向き合ってきたのか」という歴史を知る上でも、非常に参考になる一冊だと思います。

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