お問い合わせ

blog

ideal

今の学校英語教育は「下手くそな客商売」である

2026/7/8

「コンビニの父」

最近、セブンイレブンの創業者で「コンビニの父」といわれている鈴木敏文さんの本を読みました。

その中で、印象に残った言葉があります。

「お客様のために」ではなく、「お客様の立場で」考えることが大事である。

「お客様のために」と「お客様の立場で」。

同じ言葉のように思えます。

しかし、実際には大きく違うと、鈴木さんはおっしゃっています。

「お客様のために」と考えると、売り手側の私情が入り込むことがあります。

「これはきっとお客様のためになるはずだ」
「自分たちの商品はよいものだから、お客様も喜ぶはずだ」

このように、売り手側の理想や思い込みが先に立ってしまうことがあります。

一方で、「お客様の立場で」考える場合は違います。

お客様が本当に困っていることは何か。
お客様が本当に求めているものは何か。
お客様にとって、使いやすいものになっているのか。

そうした視点から考えることになります。

この話を読んだときに、ふと思いました。

今の学校英語教育は、

「下手くそな客商売」

のようになっているのではないか、と。

以前の英語教育への反省

以前の学校英語は、「文法」と「暗記」が中心でした。

英文法を学び、単語を覚え、英文を日本語に訳す。

そうした勉強を、中学・高校と続けてきました。

しかし、その結果として、

「何年も英語を学んだのに、英語を話せるようにならない」

という批判がありました。

確かに、その指摘には一理あります。

中学・高校で英語を学んでも、実際に英会話ができるようになる人は多くありませんでした。

その反省を踏まえて、今の学校英語教育は大きく変わりました。

以前よりも「会話」や「コミュニケーション」が重視されるようになりました。

さらに、

「早い段階から英語に慣れれば、発音もよくなる」

という考え方からでしょうか。

小学校でも英語教育が行われるようになりました。

考え方としては、分からなくもありません。

英語を実際に使えるようにしたい。
将来、国際社会で活躍できる子供を育てたい。

そうした理想があるのだと思います。

しかし、問題はその結果です。

現場では混乱が起きている

実際に小中学生を指導している立場から見ると、今の学校英語教育には、かなりの混乱を感じます。

特に気になるのは、

「小学校英語と中学校英語の連携がうまく取れていない」

ということです。

小学校では、「英語に親しむ」ことが前提になっている。

そのため、小学校の英語の授業は「レクリエーション」の度合いが大きいです。

なので、小学生のうちに英語を嫌いになる生徒はいません。

テストはありますが、めちゃくちゃ簡単なので、ほとんどの生徒が高得点。

そのテスト結果を見た親は

「小学校の英語では、うちの子はつまづいていない」

と安心してしまいます。

ところが中学に入ると、そうした状況は一変します。

小学校の英語は「お遊戯」程度のものなので、まったく身になっていません。

一方、中学の英語の教科書は、小学校で出てきた単語や文法については「習ったこと」になっています。

「すでに英語については、ある程度身についている」

そうした前提で、授業は進んでいきます。

昔であれば、中学1年生の最初は、

「アルファベットやbe動詞」

といった、比較的簡単な内容から、ゆっくり始めることができました。

ところが今は、最初から扱う内容が多く、進度も速い。

「小学校で身につけてきたはず」

という前提で進んでいくため、小学校のうちに「何も身につけていなかった」生徒は、あっという間に置いていかれます。

その結果、中1の早い段階で英語が苦手になる生徒が増えているように感じます。

「英検の取得率」は上がっているのかもしれません。

しかし、

「学校の英語教育の結果、多くの生徒が英会話をスムーズにできるようになった」

という実感は、少なくとも現場ではありません。

むしろ、英語の実力は落ちているのではないか。

先に挙げたように、小学校と中学校の接続がうまくいっていない状態がここ数年続いているので、

「小学生のうちに、何も準備をしてこなかった」

生徒には、教えにくくて仕方がない。

結局、塾では昔ながらの「文法」と「暗記」を中心に指導し直すことになる。

これが、現場で小中学生を見ている私の実感です。

「お客様のため」の教育になっていないか

ここで、鈴木敏文さんの言葉に戻ります。

今の学習指導要領は、「お客様(生徒)の立場で」考えられたものなのでしょうか。

それとも、「お客様(生徒)のために」と言いながら、作り手側の理想を押し付けているものになっていないでしょうか。

「これからの時代は英語でコミュニケーションできる力が必要だ」
「だから、会話中心の英語教育にする」
「小学生のうちから英語に慣れさせる」
「そうすれば、子供たちは英語を使えるようになる」

理屈としては分かります。

しかし、それは本当に生徒の立場で考えたものなのでしょうか。

生徒たちは、その内容についていけているのか。

小学校で学んだ英語は、中学校の英語につながっているのか。

英語が苦手な生徒でも、段階を踏んで身につけられる仕組みになっているのか。

現場で教える先生たちが、無理なく指導できる形になっているのか。

そうした視点があったのか、疑問に感じます。

「自分たちの商品は素晴らしいものだから、きっとお客様のためになる」

これは、売り手側としては、ついしてしまいがちな思考です。

ですが、客商売としては「危険な考え方」である、と鈴木さんはおっしゃっています。

教育に置き換えれば、

「この学習指導要領は、子供たちの将来を考えた素晴らしいものだから、これに沿って学べば、きっと子供たちは英語が話せるようになる」

ということになります。

しかし、実際にお客様の立場と同じ立場である生徒たちがついていけていないのであれば、それは「よい商品」とは言えません。

どれだけ理念が立派でも、生徒が英語を身につけられなければ意味がありません。

必要なのは「生徒の立場で」考えること

今の学校英語教育に必要なのは、「生徒の立場で」考えることではないかと思います。

生徒たちの理解力は、どのくらいあるのか。
どのような内容を教えれば、生徒は英語を身につけるのか。
小学校と中学校で、同じ目標を共有できるのか。
会話を重視する場合、その土台としての英単語や文法は、本当に不要なのか。

こうしたことを、もっと丁寧に考える必要があります。

英語教育の理想を語ることは大切です。

しかし、理想だけでは子供たちは伸びません。

現場で実際に学ぶ生徒たちが、どこで困っているのか。

何が分からなくて止まっているのか。

どうすれば少しずつ英語を身につけられるのか。

そこを見なければ、理想は空回りしてしまいます。

理念の押し付けでは、生徒は伸びない

今の学校英語教育は、「英語を話せるようにする」という理想が先に立ちすぎているように感じます。

もちろん、英語を話せるようになることは大切です。

私も、それ自体を否定していません。

ただ、話せるようになるためには、土台が必要です。

単語を覚えること。
基本的な文法を理解すること。
簡単な英文を覚え、表現すること。

そうした地道な積み重ねによる蓄積なしに、会話だけを重視しても、英語力は身につかないと思います。

結局、今の学校英語教育は、「お客様のために」と言いながら、作り手側の教育理念を生徒に押し付けてしまっているのではないか。

その結果、現場で混乱が起き、生徒たちが英語を習得しにくくなっているのではないか。

そんなことを感じます。

客商売であれば、お客様が商品を買ってくれなければ失敗です。

教育であれば、生徒が学習した内容を身につけられなければ失敗です。

理念がどれだけ立派でも、生徒が英語を身につけられなければ意味がありません。

次の改訂では、「生徒の立場で」考えてほしい

次の学習指導要領の改訂では、ぜひ「生徒の立場で」考えてほしいと思います。

英語を話せるようにしたい。
国際社会で活躍できる人材を育てたい。

その理想は分かります。

しかし、その理想を実現するためには、現場の生徒が実際に英語を身につけられる道筋を作らなければなりません。

小学校英語と中学校英語の接続。
文法と会話のバランス。
単語量の負担。
現場の先生が指導しやすいカリキュラム。

そうした現実的な視点が必要です。

「お客様のために」ではなく、「お客様の立場で」考える。

教育で言えば、「生徒のために」ではなく、「生徒の立場で」考える。

今の学校英語教育に必要なのは、まさにこの視点ではないかと思います。

子供たちに本当に英語を身につけさせたいのであれば、大人の理想を押し付けるのではなく、生徒が実際に学びやすい形に環境を整えること。

今回の学習指導要領の「失敗」を真摯に受け止め、

「何が悪かったのか」
「どこを修正していけばいいのか」

という基本的なところから、今一度考え直す必要があるのではないでしょうか。

※猿田塾へのお問い合わせはこちら

contact

面談のご要望など、当塾へのお問い合わせはこちらよりお願い申し上げます。後日、当塾よりご記入頂きました電話番号へご連絡いたします。