「計算力」から感じる「物足りなさ」
2026/7/24
生徒たちを指導していて、最も物足りないと感じるのが「計算力」です。
私はこれまで10年以上、小中学生を指導してきました。
しかし正直に言えば、
「この生徒は、本当に計算力があるな」
と感じた生徒は、今のところ一人もいません。
もちろん、学校で教わった計算方法は、きちんと身につけています。
筆算もできますし、分数や小数の計算も、習った手順に沿って進めることはできます。
ただし、そこから先がありません。
自分で工夫して、
「どうすれば、もっと速く解けるか」
「どうすれば、ミスを減らせるか」
というところまで考えられる生徒が、残念ながらいないのです。
数学の実力差は「ひらめき」だけではない
数学の実力差というと、
「難しい問題の解き方を思いつけるか」
「ひらめきがあるか」
という部分に注目する人が多いように思います。
確かに、難しい問題を解くためには、発想力も必要です。
しかし、首都圏の中学受験で鍛えられている層と、地方の公立小中学校で学んでいる生徒との間にある大きな差は、難問に対するひらめき以上に、
計算力の差
なのではないかと感じています。
ここでいう計算力とは、単に計算問題を正しく解ける力ではありません。
数字を見た瞬間に、その数字の性質を捉え、最も簡単な形に変換できる力です。
そして、できるだけ少ない手順で、速く正確に答えまでたどり着く力です。
「0.4」を見たら、何が浮かぶか
例えば、次のような計算があります。
0.4÷2/3
多くの生徒は、0.4を分数に直すために、
4/10÷2/3
と書きます。
もちろん、この方法でも答えは出せます。
間違いではありません。
ただ、0.4という数字を見た瞬間に、
0.4=2/5
と変換できてほしいのです。
4/10と書いてから約分するのではなく、最初から2/5が浮かぶ。
そうすれば、計算の手順が一つ減ります。
数字も小さくなるため、計算ミスもしにくくなります。
しかし、これまでの指導の中で、0.4を見た瞬間に2/5へ変換する生徒には、ほとんど出会ったことがありません。
「4×0.25」は、筆算する問題ではない
もう一つ例を挙げます。
4×0.25
この計算に対して、多くの生徒は、そのまま小数のかけ算として筆算をします。
それでもいいのですが、分数で計算した方が速い。
なので、
「分数で計算してみて」
というと、「4×25/100」
とやる。
これも間違いではありません。
しかし、0.25を見た瞬間に、
0.25=1/4
と気づけば、
4×1/4=1
となります。
極端に言えば、「4×0.25」を見た瞬間に、答えの1まで出てきてほしいところです。
こうした変換が自然にできれば、計算は圧倒的に速くなります。
ところが、多くの生徒は、習った手順をそのまま使うことしか考えません。
正しいやり方を知っていることと、数字を自在に扱えることは、同じではないのです。
教えても、なかなか使いこなせない
ある程度算数が得意な生徒には、
「0.5は1/2」
「0.25は1/4」
「0.75は3/4」
といった、小数と分数の変換を教えています。
「こういう小数はよく出てくるから、分数に変換して計算しなおすと、簡単に答えが出るよ」
と「教えて」います。
生徒たちは、「覚えろ」と言われているので、いそいそとノートに書き込みます。
しかし、いざ問題を解くとなると、ほとんどの生徒が使いこなせません。
また元のやり方に戻ってしまいます。
つまり、「知識として知っている」だけで、「自分の道具として使いこなしている」わけではないのです。
簡単な問題こそ、工夫する
なぜ、このようなことが起こるのでしょうか。
一つの原因として、普段から「簡単な問題」ばかり解いていることがあるように思います。
簡単な問題であれば、多少遠回りをしても答えは出ます。
筆算をしても間に合います。
分数をいったん大きな数字に直しても、最後まで計算できます。
そのため、
「もっと簡単にできないか」
「別の方法はないか」
と考える必要がありません。
しかし本来、簡単な問題だからこそ、工夫をする練習ができます。
同じ答えが出るとしても、
「どちらの方が速いか」
「どちらの方がミスをしにくいか」
を考える。
こうした積み重ねが、計算力を高めます。
ただ問題を解くだけではなく、解いた後に、
「もっと簡単な方法はなかったか」
と考える習慣が必要です。
中学3年生になってから差が表れる
小学生や中学1、2年生のうちは、計算が多少遅くても、それほど困りません。
問題自体が比較的単純だからです。
しかし、中学3年生になると、問題の難易度が一気に上がります。
1つの問題を解くために、複数の計算が必要になります。
そのとき、計算に時間がかかる生徒は、問題を考える余裕がなくなります。
途中の計算だけで時間も集中力も使い切ってしまいます。
計算ミスが増え、途中で何を求めていたのか分からなくなることもあります。
難しい問題が解けない原因を、
「発想力がないから」
と考えてしまいがちですが、実際には、その前段階の計算処理に問題があることも少なくありません。
計算が速く正確であれば、その分だけ、問題を考えることに頭を使えます。
計算力は、数学の「土台」ということを、つくづく感じます。
単純作業の中で、工夫を考える
大学時代の友人が、このようなことを言っていました。
「単純な反復作業の中で、どうすれば効率よくできるようになるかを考えるのが好きだ」
私は、この姿勢がとても大切だと思っています。
同じ作業をただ繰り返すだけではなく、
「もっと速くできないか」
「手順を減らせないか」
「ミスをしにくい方法はないか」
と考える。
計算練習も同じです。
ただ何十問も解くだけでは、十分ではありません。
何度も繰り返す中で、数字の特徴に気づき、自分なりの工夫をしていく。
その結果として、計算が速くなり、正確になっていきます。
「算数が得意」な生徒ほど、もう一段上を目指してほしい
特に、「自分は算数が得意だ」と思っている生徒には、もう少し上を目指してほしいと思います。
学校の問題が解ける。
テストで高い点数が取れる。
それだけで満足するのではなく、
「もっと速く解けないか」
「別の考え方はできないか」
と考えてほしいのです。
今の生徒たちは「素直」です。
素直さは大事です。
ただ、そこから先、
「自分なりに工夫する」
というところになると、非常に物足りなさを感じます。
「学校で教わったことさえしっかりできれば、それでOK」
そうした姿勢の子がほとんどです。
しかし、それだと物足りない。
自分なりに工夫しながら、速さと正確さを高めていく。
こうした意識を持つことで、算数や数学の力は、もう一段上がっていくのではないかと思っています。
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