「進路格差」
2023/1/16
先日、こちらの本を読みました。
現在、高校生の大学進学率は5割を超えています。
半数以上の高校生が大学に進学しているわけですが、その理由の多くは
「就職する際に、少しでも有利な条件を勝ち取るため」
であると思います。
確かに、一般的な統計データを見ると
「高卒よりも大卒の方が、年収が高い」
というものが多いです。
ですがその一方で、わずかながら高校生の指導もしている身としては、
「この生徒の学力、意欲で大学に進学して、果たして4年間で成長することがだろうか?」
と思うことがあります。
また、大学に進学しない半数近くの高校生は、就職、あるいは専門学校に進学するのですが、
「専門学校に進学した生徒は、きちんと就職できているのか」
ということが前からずっと気になっていました。
そうした問題を正面から取り扱っているのが、こちらの本になります。
進路格差はいつ生じる?
筆者は、進路格差は
「進学した高校でだいたい決まる」
と述べています。
高校には大きく分けて3種類あり、偏差値でいうところのいわゆる「進学校」「中堅校」「下位校」に分けられます。
「進学校」に入った生徒は、ほぼ例外なく大学進学を目指し、実際に大学に進学します。
「中堅校」の場合は、大学進学率が下がり、専門学校や就職といった進路を選択する生徒が一定割合出てきます。
「下位校」の場合は、大学進学はほぼなく、専門学校や就職が中心となります。
このように
「進学した先の高校のレベルによって、その先の進路もほぼ決まっていく」
と述べられています。
この分析は、このあたりの「中信地区の高校」を考えてみても、当てはまっているかな、と思います。
「大学に進学した」といっても…
こうした格差は大学進学後も続き、大企業に就職できるのは、いわゆる「高偏差値」の大学が中心となります。
一方、偏差値が低い大学の学生の就職先は、地元の中小企業が中心となります。
そこで、地元の中小企業が大学卒の学生を採用してみると、
「就職試験の結果が、大学卒と高校卒とで、ほとんど変わりがない。むしろ高校卒の方が結果がいい」
ということがあるそうです。
こうした結果を踏まえて、中小企業の採用担当者から
「大学4年間で、一体何を学んできたのですか?」
という疑問が呈された、ということが挙げられていました。
先に
「この生徒は、大学に進学して成長することができるのか…」
と思っていた話をしましたが、実際にそういった事象がある、ということです。
ただ単に
「大学に進学すれば、なんとかなる」
と考えて進学するのは、危険だと思われます。
専門学校は「玉石混交」
一方、専門学校に進学した場合、
「専門学校で学んだことを活かして、就職できるかどうか」
という部分が問題になります。
専門学校の進学先として多いのが「医療系」です。
看護師を中心に、歯科衛生士、理学療法士といった、資格取得を目的とした専門学校への進学割合が高い傾向にあるそうです。
このように、医療系の専門学校の場合は、その方面の就職ができる可能性が高いようです。
一方、「アニメ、ゲーム」といった、若者に人気のある専門学校への進学割合も一定数あります。
ですが、こうした業界は、「当たり外れ」の大きい分野となるため、専門学校で学んだことが、そのまま就職に活かされるか、という点で、疑問が残る分野でもあるようです。
また、専門学校自体が「玉石混交」であり、親身になって生徒の進路を考えてくれるところもあれば、生徒を「札束」としか思っていないような学校もあるようです。
「安易な進路選択」は危険
という印象を受けました。
進学先で「何を学ぶ」のか?
私が高校生、あるいはその生徒の保護者を見ていて
「危ういな…」
と感じるのは、
「大学へ行けさえすれば、なんとかなる」
と思っている節がある、という点です。
我々が大学生の頃は、まだそれが通用していた面がありました。
ですが、今はもうそのような時代ではありません。
学生を採用する企業側は、学生の「本質」をきちんと見抜いてきます。
「肩書」だけではなく、その人物がどのように「自らを鍛えてきたのか」を踏まえて採用する。
今はそのような時代だと思います。
一番大事なことは、大学であれ、専門学校であれ、高校であれ、就職するまでに
「どのようなことを学んだのか」
という部分をしっかりと提示することができるか、だと思います。
結局
「ラクな道などはない」
ということです。
こうした「現実」をいかに「学生」に伝えていくか。
これも塾講師の大事な仕事だと思っています。
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