「本質」を考える
2023/12/19
「おうぎ形」の計算
中1の生徒は、「おうぎ形」の計算を練習しています。
まずは「公式」を覚える。
次に「公式」にあてはめて、実際に計算して答えを求める。
ここまでは、みんなだいたい問題なく進みます。
問題は、その先。
おうぎ形の公式を使った応用問題。
すると、おもしろいように「解けない」生徒が続出します。
しかも測ったかのように「同じところ」で解けなくなります。
基本的な方程式の計算だが…
例えば、この問題。
「中心角が60度、弧の長さが6πのおうぎ形の半径を求めよ」
公式にそのまま当てはめると
「2π×r×60/360=6π」
という方程式が成り立ちます。
あとはこの方程式を解くだけなのですが…。
この計算を解いて、答えを出してみるようにいうと、生徒は
「r=2」
と答えます。
どこで間違えるのか。
さきほどの方程式で、両辺のπをなくし、左辺を約分していくと、
「1/3r=6」
という形に整理できます。
ここで、ほとんどの生徒が「6÷3」という計算をして「r=2」と間違えます。
方程式の、ごくごく基本的な計算ができない。
毎年のことながら、ため息が出ます。
「機械的に解くな」と言っているのに…
「1/3r=6」
この場合は、「両辺に×3をする」というのが正しい計算方法です。
なので、答えは「r=18」です。
説明すると、
「あぁ、なんだ~」
という反応をするので、そこですかさず突っ込みます。
「じゃあ、なんで『両辺に×3』をして計算するんだっけ」
「…」
ここで生徒は、また沈黙です。
方程式の計算を最初に学ぶ時、「等式の性質」について学びます。
「等式の両辺には、同じ数をかけても、結果は変わらない」
こうした性質があるから「両辺に×3」をすることができる。
「等式の性質」について、きちんと理解していれば、「6÷3=2」のような、機械的な処理にはなりません。
ですが、生徒のほとんどが、等式の性質の後に習う「移項」を使った計算に慣れきってしまいます。
「移項」を使った計算では、
「右辺の数字を、文字の前の数字で割って答えを出す」
という計算を数多くこなします。
「2x=4」「3x=6」
のような形です。
こうした計算に慣れてしまうので、何も考えずに
「1/3r=6」
という形の場合でも、「r=2」という風に答えてしまうのだと思います。
こうなることはわかっているので、方程式の計算を練習している段階で、
「ただ機械的に計算を解くだけでなく、『等式の性質』を意識しながら解くこと」
と言っているのですが、移項の計算の方がラクですし、それである程度は解けてしまうので、なかなか「等式の性質」が身につきません。
ラクしてやっても
生徒を指導していてつくづく思うのは
「ラクな方法は、『早道』を行くようで、実は『遠回り』」
ということです。
「ラクな計算方法」を教えると、その時点で生徒は喜びます。
「こんなラクな方法があったのか!」
と。
そして、その時点では、問題も簡単に解けます。
ですが、その後しばらくして、テストが近くなり、自分でその問題を解こうとした時に、その
「ラクな計算方法」
が思い出せず、結局問題が解けない。
「悪銭身につかず」ではないですが、ラクをして学んだことは、いざという時になんの役にも立たない。
そう思います。
多少遠回りであっても、
「自分の頭でじっくりと考えて、納得しながら進める」
このような生徒の方が、遠回りに見えて、最終的には成長の幅は大きいです。
ただ、今は簡単に解く方法をすぐに教えてしまう傾向にあります。
なので、そうした「じっくり考える」生徒がなかなかいないのが残念です。
せめて自分の塾に通っている生徒には、
「教えすぎない」
ようにしようと思っています。
その瞬間は「ケチだな」と思われるかもしれません。
ですが、長い目で見れば、教え過ぎない方が、その子のためになるように思っています。
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