幼児期に大切な「運筆能力」
2026/8/28
「運筆能力」
先日、隂山英男先生のコラムを読みました。
その中で、貝原益軒の『和俗童子訓』に、
「幼児の学習は、読むことよりも書くことから始める」
という趣旨のことが書かれている、と紹介されていました。
隂山先生は、その意味がよく分かったのは、生徒たちの「運筆能力」を見るようになってからだそうです。
運筆能力、つまり「鉛筆を自分の思った通りに動かす力」が十分でないために、勉強そのものを嫌いになってしまう子が多いことに気づいた、という内容でした。
これを読んで、
「確かに……」
と思い当たることがありました。
「字が汚い」とは少し違う
生徒を指導していると、たまに、
「自分の思った通りに字を書けない、線が引けない」
という子に会います。
頭の中では分かっている、イメージできている様子なのに、それを紙の上にうまく表現できない。
例えば、まっすぐな線が引けない。
数字をそろえて書けない。
図形を写しても、形が斜めになっている。
これは単純に「字が汚い」という話とは少し違います。
字が多少雑でも、自分の思った通りに鉛筆を動かせている子はいます。
一方で、運筆能力が十分でない子は、
「『こう書きたい』という頭の中のイメージ」と、
「実際に書かれたもの」
が一致していない、という感じがあります。
そして、こうした生徒は、学習面でも苦労していることが多いように感じます。
書くだけで大きな負担になる
考えてみれば当然のことなのかもしれません。
勉強では、何度も「書く」という作業をします。
もし鉛筆を動かすこと自体に大きな負担がかかっていれば、勉強はそれだけで「疲れる作業」になります。
他の子が「問題を考えること」に頭を使っている時に、運筆能力が低い子は
「きれいに字を書くこと」
「きれいに線を引くこと」
に、まず意識を使わなければなりません。
そうすると、その時点で力を使い果たしてしまって、問題を考えることに頭が使えない。
そうなれば、勉強が嫌になるのも無理はありません。
運筆能力は、一見すると学力とは関係のない力に見えます。
しかし実際には、学習を支えるかなり重要な基礎能力なのだと思いました。
遊びの中でも鍛えられる
りんご塾のカリキュラムの中に、「鉛筆で線をなぞる」という練習があります。
正直、最初に見たときには、
「こんなことをやって、意味があるのかな……」
と思っていました。
しかし今回、運筆能力という視点を知って、
「これは鉛筆を思った通りに動かす練習だったんだな」
と気づきました。
自分の幼児期を振り返ってみると、迷路を鉛筆でなぞって遊んでいた記憶があります。
スタートからゴールまで、線にぶつからないように進んでいく。
当時はもちろん、
「運筆能力を鍛えよう」
などとは考えていません。
こうした「ちまちま書く」ことが好きだったので、ただ楽しく遊んでいただけです。
しかし今振り返ると、そうした遊びの中で、自然と鉛筆を動かす力を身につけていたのかもしれません。
迷路だけでなく、点つなぎ、塗り絵、お絵描きなどにも、同じような効果があるのでしょう。
まずは、自分の思った通りに手を動かせるようにする。
鉛筆を自由に扱えるようにする。
こうした土台をつくっておくことが、その後の学習をスムーズにしてくれるのだと思います。
幼児のお子様がいるご家庭では、ぜひ一度「運筆能力」という視点を持ってみてください。
迷路やなぞり書きなど、遊び感覚でできるもので十分です。
勉強を始める前の「書く力」。
意外とそこに、その後の学習を左右する大切な土台があるのかもしれません。
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