「天佑なり」
2023/1/26
最近、こちらの本を読みました。
高橋是清の一生についての小説です。
日本経済は、ここ数年回復傾向にあるものの、いまだ低迷を続けています。
こうした状況において
「今の経済状況において、高橋是清が生きていたら…」
という声を聞くことがありました。
高橋是清という人物。日本史で名前を聞いたことはありましたが、恥ずかしながら
・大蔵大臣や総理大臣になったことがある人
・二・二六事件で暗殺された人物
くらいの認識しかありませんでした。
ですが、
「アメリカで奴隷になったことがあるような人物」
という逸話を聞き、そのような状況から、どのように大臣、そして首相まで上り詰めたのかが気になり、この本にたどり着きました。
破天荒な青年期
「アメリカで奴隷になったことがある」
という逸話を知っていたので、
「小さい頃は、あまり恵まれた環境ではなかったのだろうな」
というイメージを持っていました。
ですが、実際に読んでみると、予想の遥か斜め上をいく青年期。
詳しくは実際に読んでみていただきたいのですが、とにかく若い頃は「ハチャメチャ」という印象です。
もっと「お堅い」人物だと、勝手にイメージしていたので、こちらが抱いていたイメージとのギャップに、かなり驚きました。
「え、この人、首相になったんだよな…」
読みながら、そんなことを思いました。
日露戦争での資金調達
そんな高橋是清ですが、徐々に才覚を表していきます。
そして、有名な功績である
「日露戦争における戦費調達」
の話です。
このあたりは何となく知っていたのですが、当時の日本の情勢、海外の投資家とのやり取り。
ギリギリの状況の中で、いかに資金を調達するか。
その経緯を知るに連れて、どんどんとのめりこんでしまいました。
「よくまあ、あのギリギリの状況の中で、戦費を調達することができたな」
と思います。
戦争において称賛されるのは、現場の軍人であることが多いです。
日露戦争であれば、
「秋山好古、真之兄弟」「東郷平八郎」「乃木希典」「児玉源太郎」
といったところでしょうか。
ですが、その華々しい戦果の裏側には、
「高橋是清のような人物が、日本を支えていた」
という事実があった。
このことを、もう少し早く知っておきたかったと思います。
「歴史は得意」だと思っていましたが、まだまだ未熟だな、と思います。
「失敗」から何を学ぶか
高橋是清の偉大なところは
「知識」を知識としてもてあそぶことなく、現実に即した「行動」として伴うことができた
点にあると思います。
学者の「理論」は素晴らしい。
だが、実際の現場では、その「理論」は机上の空論となり、役に立たないことがある。
ですが、高橋是清の場合は、理論的根拠があり、かつ現実を見て、その中でバランスを取りながら結果を残していくことができた。
そしてその裏には、若い時に経験した数々の「失敗」が土台としてあるように感じました。
「苦労は買ってでもしろ」
という言葉がありますが、この言葉がこれほど似合う人物はいないのかな、と思います。
今の時代は恵まれた環境にあります。
また社会的に「モラル」が厳しく問われる時代です。
こうした環境においては、高橋是清のような破天荒な人物は登場しないんだろうな。
そのようなことを思いました。
上下巻ありますが、夢中になって読んだので、あっという間に終わりました。
おすすめの本です。
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