「紙上面接」の狙いは何だろう?
2023/6/16
長野県の公立高校入試は、再来年から変わります。
現在の中学2年生の代から変わります。
主な変更点は
①「前期選抜でも『学力テスト』が実施される」
②「前期・後期選抜ともに『面接』が実施される」
です。
そのうち②の面接については、
「対面による面接」
「紙上による面接」
の2種類があるようです。
この「紙上面接」について、「う~ん…」と思いました。
紙上面接の意味
「後期選抜で面接が導入される」
ということを聞いて、私はてっきり
「全生徒に、対面での面接が課されるのだな」
という風に思っていました。
私は以前神奈川県の塾に勤めていましたが、神奈川県の公立高校入試では、全生徒に「対面での面接」をやっていました。
なので、てっきり長野県の公立高校入試もそうなるのだと思っていました。
ですが、よくよく調べてみると、「紙上面接」という、筆記による面接が実施される、とのこと。
しかも、松本4校(深志、県ヶ丘、蟻ヶ崎、美須々)に関しては、すべて「紙上面接」とのこと。
そうした状況を見ると、
「果たして『紙上面接』など、やる意味があるのだろうか…」
と思ってしまいました。
問題点①「合否に影響するのか」
まず思ったのは、
「紙上面接の内容によって、合否に影響があるのか?」
この点については、長野県教育委員会HP「令和7年度長野県立高等学校入学者選抜要綱案」の6ページに、「入学者の選抜」について、このような記載があります。
選抜は、調査書、学習成績一覧表、学力検査の成績等を資料とし、高等学校の教育を受けるに足る能力と適性等を判定して行うものとする。
また、高等学校長は、面接、志願理由書、作文又は実技検査を選抜の参考資料とすることができる。
なお、参考資料とは「学びへの姿勢」、「必要な技能」、「主体性や意欲」などを、総合的かつ多面的に判定するための補完資料である。
こちらの要綱案によれば、
まずはこれまで通り「内申点」「テスト結果」によって判定し、
「面接」は「参考資料」という位置づけになるようです。
なので、
「内申点」「学力テスト」が低いのに、「紙上面接」の内容がいいから、ということで合格する
ということは、なさそうです。
であれば、
「合否に影響がないのに、そもそも『紙上面接』なんてやる意味があるのかな」と思ってしまいました。
強いて言えば
「内申点」「学力テスト」がまったく同じ数値だった時の合否を決めるための、参考資料
としては、使えると思います。
ですが、そのような「ボーダーライン上」に並ぶ生徒が果たしてどれだけいるのか。
その数少ない状況に備えるために、その高校を受ける「全生徒」に「紙上面接」を課すのは、どうなんだろう…、と思ってしまいます。
問題点②「生徒の負担が大きい」
次に、「生徒の負担が大きい」という点です。
さきほどの「令和7年度長野県立高等学校入学者選抜要綱案」によれば、「紙上面接」の実施は、
紙上面接は、学力検査実施日の午後3時35分から午後3時45分まで行うものとする。
とのことです。
テストが終わって、「やっと終わった~」と思っている生徒たちに、さらに
「追加でこれ書いてね」
という形で行われるということです。
これはちょっと「鬼だな」と思います。
「面接シート(案)」によれば、記入内容として、
「1 これまで、学校での学習や学校内外での活動の中で、関心を持って 取り組んだことと、その中で学んだことは何ですか。」
「2 高校で何を学んだり、何に取り組んだりしてみたいですか。」
「○ 高校に伝えたいことや理解してほしいこと、自己ピーアールなどを 自由に記入してください。 ( 記入した内容によって、選抜で不利になることはまったくありません。)」
が挙げられています。
「そんなに難しいことを要求しているわけではないから、大丈夫」
と思われるかもしれません。
しかし、5時間近く入試問題と向き合って、ヘロヘロ頭の状態になっている生徒が、この問いに対して、的確に自分を表現することができるのか。
ちょっと疑問です。
そもそも、疲れていない状態であっても、こちらの「面接シート」の内容を生徒に書かせてみて、10分でまとめられる子は、少ないような気がします。
なので、選抜側が期待しているような、いわゆる「いい文章」というものは、あまり期待できないような気がします。
問題点③「学校の負担も大きい」
運営する学校側の負担も大きいです。
「ただ生徒に書かせればいい」
と思われるかもしれませんが、
「じゃあ、書いた面接シートを、どのように保管しておけばいいのか」
という点で、答案と同じように管理するのに気をつかわなければなりません。
また、生徒に書いてもらった以上、すべての面接シートに目を通す必要があります。
そして、その結果は、「合否に特に影響がない」ということになります。
ただでさえ採点で大変なのに、
「合否に影響がない」
ことについてまで、気を回さなければならない。
「合否を決める」という神経をつかう作業をしている高校の先生の負担を増やしてどうするんだろう…、と思います。
やるなら「対面での面接」を
以上、思いついた問題点をザッと挙げて見ましたが、
「紙上面接をやる意味」
というものが思い浮かばない、というのが個人的な感想です。
ただ単に、「生徒」「先生」の負担を増やしているだけではないのかな。
そのような気がします。
もし面接をやるのであれば、
「対面での面接」
をやった方がいいように思います。
また、その結果を「合否に反映させる」こともした方がいいです。
その方が、生徒のためになるように思います。
就職活動などで、面接をする機会はありますので、「小さいうちから経験しておく」というのは、意味があります。
その分、先生方の負担はきつくなるので、現場の声を十分に聞く必要はあると思いますが。
いずれにしても「紙上面接」というのは、「どっちつかずの中途半端」という感じがします。
なので、改善していただいた方がいいかな、というのが個人的な意見です。
※猿田塾へのお問い合わせは、こちらから