「みはじ」について思うこと
2023/9/25
「みはじ」の可否
You Tubeをぼんやり眺めていたら、ショート動画で、このような動画が流れてきました。
「中学生以上は、『みはじ』は使わない方がいい」
塾講師の中でも意見が分かれる、この「みはじ」。
このことについて、私の考えを述べたいと思います。
「みはじ」とは
そもそも「みはじ」とは何でしょうか。
「みはじ」とは、小学校の算数で習う「はやさ」を求める公式を表したものです。
「み」…道のり(距離)
「は」…速さ
「じ」…時間
それぞれの頭文字を取って、それを以下のような図にまとめたものを「みはじ」と呼んでいます。
この図を覚えておけば、
「速さの公式があいまいであったとしても、問題が解ける」
ということで、特に算数が苦手な生徒にとっては、非常にありがたい「裏技」のようなものです。
否定派の意見
この便利な「みはじ」ですが、否定する考えの先生方も多いです。
否定派の先生方の意見としては、
「『みはじ』という公式だけ覚えると、深く考えることをしなくなる」
からです。
例えば、このような問題があります。
「時速60kmで、30分走った時にかかった道のりを求めよ」
この問題を、さきほどの「みはじ」の公式にそのまま当てはめると
「み=は×じ」
なので、60×30=1800
となり、答えは「1800km」となります。
ですが、これは明らかにおかしいです。
どこがおかしいか、ちょっと考えてみてください。
「みはじ」という公式だけ教える指導をしていると、このように
「公式に当てはめて答えを出すだけの、表面的な解き方しかできなくなる」
というのが、「みはじ」否定派の先生の意見です。
最初は否定的だったが…
で、私はどう思っているかと言うと、塾講師なりたての頃は、完全に「否定派」でした。
確かに小学校の頃に「きはじ」「はじき」なんてことを先生が言っていた記憶はあります。
が、私自身、それは完全に聞き流していました。
速さの文章題を解きながら、
「なぜ公式に数字を当てはめても、変な答えになってしまうのだろう?」
というところから、
「なぜ公式のような計算をすると、『道のり』『はやさ』『時間』を求めることができるのだろうか」
についてあれこれと考え、
「速さというのは、結局『1時間あたり』の数値を出しているんだな」
ということを理解していったからです。
「公式についての本質的な理解」というものが出来ていたので、特に公式を覚えていなくても、先程のような
「時速60kmで、30分走った時にかかった道のりを求めよ」
という問題でも、
「時速は1時間あたりに進む距離だから、30分を時間に直してから計算する」
ということがパッとわかり、
「60×1/2=30」
という計算をすることができました。
算数・数学や理科に関しては、
「なぜそのような計算をしたら、その答えが出るのだろうか?」
「その計算をして出た答えは、何を表しているのだろうか?」
ということを考えながら問題を解いていました。
そのような小中学生だったので、正直「公式を覚えるだけ」というのはあまり好きではありませんでした。
理解できない生徒たち
ですが、塾講師として生徒を指導していくうちに、考え方が変わっていきます。
私としては、
「公式だけ覚えても、表面的な理解はすぐに忘れるから、本質的に理解した方が忘れない」
という思いから、「みはじ」は使わず、なるべく速さの「本質的な意味」について教えていました。
ですが、生徒たちには、それがわからない。
「はやさ」を本質的に理解するには、「単位量あたり」についての理解が必要です。
ですが、その「単位量あたり」についての考え方が身についていない。
むしろそのような生徒の方が圧倒的に多い。
こうした「現実」に直面した時に、自分の考え方というのは、単なる「理想」にすぎない、ということを思い知らされました。
そして、
「まったくわからない生徒たちに、少しでも問題を解ける喜びをわかってほしい」
ということから、「みはじ」を積極的に使うようになりました。
「まずは形からある程度解けるようにしておく。」
「そして、解いていく中で、本質的に理解できそうな生徒には、深い部分までの理解を求めていく」
今はこのような考え方で指導をしています。
「理想」と「現実」の間
今でも、本音を言えば
「公式丸覚え」
という考え方は好きではありません。
それをやっても、
「数学や理科の、本質的な面白さ」
というのは感じられないと思っています。
その一方で、
「算数や数学がまったくわからない」
という生徒たちが大量にいる、という現実もあります。
そのような「現実」の中で、まずは生徒たちに「興味」を持ってもらう。
問題が解けなければ、その段階で子どもたちはあっさりと興味を失います。
少しでも「問題が解ける」という経験を持ってほしい。
その経験の中で、少しでも「自分で考える」生徒が出てきてくれれば…。
そう思って「みはじ」を使って指導をしています。
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